世界一のご馳走?
「お好み焼って、ちょっと豪華なお菓子か、軽い食事みたいに思われているけど、僕は世界一のご馳走やと思っています」
博美家の店長・羽田達弘さんは、自信満々にそう言った。博美家が店を構える京都駅の南側は、鉄板焼の店がいくつも軒を連ねる「お好み焼激戦地」だ。羽田さんもこの近所で生まれ育ち、学校帰りにお好み焼を食べるのが日課だったそうだ。三十年以上、洋食の店で修行した後、自分の子供のころに食べたお好み焼の味を再現したいという思いから、平成元年にこの地に店を開いた。
名物九条ネギを生かしたお好み焼
こちらのお薦めは、京都の名物九条ネギを生かした「達ちゃん焼」。薄い生地の上にネギを焼く従来のネギ焼ではなく、普通のお好み焼の上に山盛りの九条ネギを置いたものだ。これだけ聞くとネギを載せただけの単純な料理に見えるが、決してそうではない。
ネギの下のお好み焼の具は、スジに脂カスの二種類。脂カスは、店長が自分の足で買い付けた鮮度が自慢の逸品だ。これが、お好み焼にコクと味わいを与える。それ以外にも、お好み焼を美味しくするもう一つの効果がある。鉄板の上で焼いていると、ジンワリと脂が染み出すのだ。この抽出された新鮮な脂を集めて、九条ネギをサッと炒める。これで、一段とネギの風味が増す。
さらに自家製の甘辛のソースとマヨネーズをかけ、その上に、先ほど熱を通したネギをドサリと置く。具の脂カスで火を通すことにより、ネギとお好み焼の一体感が増している。シャキシャキのネギとホクホクのお好み焼を頬張れば、なるほど店長の「世界一のご馳走」という言葉も嘘ではないとわかる。
試行錯誤と素材選び
使っている材料は、どれも業者からの配達任せにせず、店長自ら市場や八百屋を回って見つけた鮮度が自慢のものだ。九条ネギも契約した農家から、朝採りのものを直接もらってくるという。
さらに、5種類あるソースに醤油ダレ、マヨネーズにいたるまで全て自家製。これも、自分の理想のお好み焼に近づけるためだ。
生地の出汁は六種類の素材を使って、「ラーメンスープのように」と店長が表現するほど丹念に取っているという。
これらは、何年も試行錯誤を繰り返した結果できたものだという。店の壁には、「おいしくなったのをご存知ですか? やっと理想の味に近づきました」と書かれた真新しい紙が貼られていた。
店長のお好み焼にかける真摯な努力があって初めて、博美家のお好み焼は「世界一のご馳走」に変わるのだろう。