1月28日
ハウスメーカーの泣き言 その7
最後に、ヤカラ対策の方法を紹介します。職人さんの中には、そういうヤカラ対策を得意とする人がいました。これは、そんな人から聞いた話です。
【真心のヤカラ対策】
ヤカラは、まだお金を払ってしまえばいいのですが、本職のヤクザだと個人では払いきれません。そういう時は、ヤクザ専門の職人さんの出番になります。
もちろん、彼らもふだんはれっきとした社会人。しかし、土建業だけあって、そのスジの人にも顔がきくのです。
そんな中でも、Aさんは特にヤクザ対策に定評がありました。
まず、何といってもAさんは、顔が怖いのです。現場がわからず、通りがかりのオバアチャンに道を聞くと、そのオバアチャンが立ったまま寝たふりしてしまうほど怖いのです。
しかも、体にある細工をしていました。Aさんは、ヤクザの事務所に乗り込む時、精一杯の笑顔と菓子折りを持って行きます。そして、菓子折りを皇帝に差し出す従者のように両の手の平に置いて渡すのです。
相手もヤクザですから、顔が怖い程度ではビビリません。逆に、
「アホ、お前そんなんですむか! 誠意見せんか、誠意!!」
と脅されるぐらいです。
しかし、Aさんは神妙な顔を貫き通し、ヤクザが受け取るまで下手に出続けます。ヤクザが仕方なく、菓子折りを受け取ると、その細工が始まります。
Aさんは、ヤクザが菓子折りを持った瞬間、手を裏返します。ヤクザが何気なく、菓子折りを自分の手元に持ってくると、Aさんの両手の甲が見えるのです。そして、両手の甲にそれぞれ、
「まごころ」
「せいい」
という平仮名の刺青が、深々と彫りこまれているのです。
そして、オバチャンを狸寝入りさせた顔を近づけ、
「このへんで勘弁してくれへんか?」
とすごむのです。
刺青を見慣れたヤクザもさすがに、これにはビビルそうです。
以前、Aさんにヤカラ対策のコツを聞いたことがあります。
すると、Aさんは右手の甲を指さして、
「お金の問題じゃないんです。真心ですわ、マ・ゴ・コ・ロ!」
とすごい笑顔で教えてくれました。